【翻訳】PV’s Playhouse – 上級者が犯すミス5ヶ条
2014年12月23日 翻訳 コメント (10)PV’s Playhouse – The Top 5 Mistakes Good Players Make
By Paulo Vitor Damo da Rosa // 17 Dec, 2014
http://www.channelfireball.com/articles/pvs-playhouse-the-top-5-mistakes-good-players-make/
やあ!
マジックは複雑で、ミスの1つや2つは簡単に起こしてしまうものだ。経験が浅いほどミスはよりしやすいが、どんなに慣れても絶対にミスをしない境地には辿り着けない。僕が競技マジックに勤しむようになった頃に読んだGabriel Nassifによると、彼は1ゲームにつき少なくとも1回は大きなミスをし、それを励みにするそうだ。しかも依然として直っていないんだってね。
誰でもマジックを始めたての頃は基礎もままならず多くのミスをする。これはプレイヤーとして熟達していくに連れて直っていくが、熟達したプレイヤーほど過剰に相手を『読んで』しまって、初心者よりも結果的に多くのミスをしてしまうんだ。
ミスその1-あらゆる要素をコントロール出来ると思ってしまう。
競技マジック志向になると誰もが自分の運の無さを嘆く。土地事故、相手の神引き、ダブマリ、などなど……。そんな状況にいざ対峙すると、皆その不運に気を取られ、勝率を少しでも向上できる手段があっても見落としてしまう。
成長していくに連れて、今まで見落としてきたプレイングに気付くだろう。ああそうさ、さっき4枚目の土地を引けなかったばっかりに負けてしまったけど、2ターン目に別のプレイをしていれば1ターン余分に生き残ってそれを引けたかもしれない。相手が長期戦で強いカードを何枚も引いたようなら自分もそんなカードをデッキに入れればいい。僕達はそういった敗北から自分の弱点を知り、修正していくものだ。それが上手いプレイヤーになるための第一歩さ。
じゃあ問題は何かって?その第一歩を踏み出しすぎることだ。僕達はあらゆるもの全てをコントロールしようとするが、そんなことは出来ない。空振りに終わるだけだ。多くの戦術記事はよく、「もし君が負けたら、それにはなにかミスがあるから、それが起こった原因を探してみよう」と言う。確かに励みになる言葉だ。もし敗北が本当に自分自身のミスによるものであれば、それを修正し、そんな記事を書けるような謙虚で現実的なプレイヤーになれるだろう。だけど、それは常に正しくはない。
マジックには偶然性が付き物だ。プレイアブルでないハンドを2回も貰いダブマリすることになり、2枚目の土地を引けずに負けてしまうことは普通にある。ではその敗北のどこに落ち度があるだろうか?
一番大切なこと。たまに不運でもないのに負けることがあるが、そこにミスがあったとは限らないのだ。全て正しいプレイをしても負けることもある。しかしその負けを過剰に正当化しようとすると、それは将来のミスに繋がる恐れがある。マジックで負けるなんて当たり前だ。2人で対戦したら1人は必ず負ける。その2人がどんなに優れてたプレイヤーで引きが完璧であったとしても、それでもやはり1人は負けてしまうんだ。
大切なことなので2回言うけど、「全てをコントロールすることは出来ない」!これを理解し、ただ1つの敗北から自分を責めないことだ。理由もなく負ける、それはよくあることなんだ。
負けてしまってもそれは君の責任ではない。正しいプレイをしても負けることはある。負けとはマジックというゲームの一部であり、そこに特別な理由なんて無い。ツイていたって負けるときは負ける。世界の強豪ですら勝率は70%を下回る。『最強のプレイヤー』なんてものがいたとしても、75%にも届くか怪しいね。
どうか、自分に厳しくしすぎないことだ。何とかして勝率を向上できるプレイングを探し当てることも大事だが、それと同じくらい、自分自身ではどうしようもない部分がマジックにはあることを理解するのも大事だ。
ミスその2-構築戦で後手を選ぶ。
先手を取るのは自然なことだ。初心者も十中八九先手を選ぶだろう。そして経験を積んでいくと後手の重要性に気付いていく。例えばテンポではなくカードアドバンテージで勝てるシールドでね。
やがて彼らは後手を選ぶようになるだろう……少々過剰なまでに。「後手選択は上級者の基本」とでも言うかのように。
僕の考えでは構築戦で後手を選ぶ戦術はもう過去の遺物だ。ソーサリーやインスタントが強かった昔は確かに有効だったが、今はクリーチャーやプレインズウォーカーといったパーマネントのカードパワーが上昇しており、その戦術が通用するようなゲームではなくなっている。
《稲妻》は1ターン目であろうと2ターン目であろうと3点入れる。もし3/3が2ターン目にいたら同じく3点を入れられるが、1ターン目にいたら6点だ。プレインズウォーカーは早く出せばより多くのアドバンテージをもたらす。後手に回って相手の行動に逐一対処を迫られるなんて御免だね。コントロールミラーなら尚更だ。
プロプレイヤーがミスって後手を選んだ場面を僕は2つ覚えている。1つはSam BlackがPTフィラデルフィアの準決勝でJosh Utter-Leytonと対決した時にやらかした。彼は《猛火の群れ》感染を、JoshはCFB製ズーだったが、Samは後手を選んだんだ。(※参考:http://coverage.mtg-jp.com/ptphi11/article/000584/)
そのマッチアップにおいて彼の想定するサイドボーディングは《呪文滑り》等を入れることであった。試合は消耗戦になりやすく、故に彼は後手を取りそれらをより多く引くことを欲した訳だ。……だが、彼は先手を取ることで得られるテンポアドバンテージとドブンの価値を見落としていた。Samが《墨蛾の生息地》をコントロールしているときにJoshが取れる策はただクリーチャーを展開することのみであり、Samには妨害を受けずに楽々と勝利できる可能性があったし、2ターン目に《荒廃の工作員》をプレイしたなら返しでJoshはそいつの除去に全力を注がなければならない。もしJoshが先手なら、彼が先にクリーチャーをプレイ出来るというメリットによってそれらの脅威は無に帰す。例えば《荒廃の工作員》を除去して3点のアタック、或いは《荒廃の工作員》を除去して6点。更に追加のパワー3クリーチャープレイ。カードを多く引けることよりもずっと大きなアドバンテージだ。
もう1つの場面は青黒コントロールを駆るGuillaume Wafo-TapaがCaw-Bladeと対峙した時だ。彼も後手を選び、その理由もやはり消耗戦におけるカードアドバンテージだった。僕はその選択はミスだと思う。何故なら《戦隊の鷹》は彼にとって大きな脅威となるはずであり、《マナ漏出》はそれへの最適な回答になる。しかし後手を選ぶと2ターン目の鷹に対処出来なくなってしまうのだ。
さて恐らく大抵の人は構築戦で先手を選びがちだろう。それは往々にして正しい選択であり、稀に悪手となることはあっても致命的なミスにはならない。そして、どちらが先手かで勝率が大きく変わるマッチアップ―65%対35%が35%対65%になるような―そんなマッチアップで後手を取ったらそれは致命的になる。相手に蹂躙される前にそのミスから持ち直す猶予は……極僅かだ。
一方、後手の強みは些細なものだ。例え後手を取るべき試合で誤って先手を取ってしまったとしてもせいぜい勝率が52%対48%から48%対52%に変わる程度だろう。それに後手を取るべき試合とは長期化するものであり、後手で得たアドバンテージもロングゲームでは薄まっていく。僕だって最後に構築戦で後手を取るべき試合があったのはいつだったか覚えてないよ。だから、迷ったなら先手を取るべきだ。
ミスその3-土地をプレイしない。
ブラフの概念が無い初心者は手札に残った土地を全てプレイする。しかし経験を重ねるに連れて、手札に土地を抱え込むことが大抵ブラフとして機能することに気付く。……そして更に熟達していくと、土地を抱え込みすぎたがために負けてしまう試合をいくつも経験するだろう。
負けてしまう原因は2つ。1つは、思っていた以上にマナを要求される場面があったということだ。シディシウィップを使っているところを想像して欲しい。場の土地は11枚、手札に残ったのは土地2枚のみ。諸君は12枚目の土地なんてプレイする必要はないと考える。……だが、次に《エレボスの鞭》を引いた時、それがミスであったと気付くだろう。鞭をプレイし(計4マナ)、《サテュロスの道探し》を釣り(計8マナ)、墓地に落ちた《イニストラードの魂》の能力を起動(計13マナ)出来れば最高の動きだ。これは12枚目の土地を前のターンにプレイしていなかったら出来ないムーブだ。
他にも、《宝船の巡航》デッキなら土地を全てプレイしておけば、トップした巡航で複数のスペルやはたまた追加の巡航を引き、それらを即プレイに持ち込めるかもしれない。
ここで言いたいことは、土地を抱え込み相手に『何かを持っている』と思わせるよりも、次のターンにカードを満足にプレイできる可能性があるなら、後者を取るほうが勝利への貢献度は高いということだ。
2つ目の原因はブラフに対する過大評価だ。ハンドが土地であることは大体看破されてしまうものだよ。11マナもあるのに2枚も手札に残したまま《包囲サイ》に一方的に殴られている時、相手はそれが《再利用の賢者》2枚だと思うかい?何かゲームプランを変えてくれるとでも?
勿論、「土地は全てプレイしろ」と言ってるわけじゃない。それはマナの使い道(mana sinks)があるときと無い時でケースバイケース。もしそれが無い時なら手札の最後の土地を温存するのは大抵正解だ。それはいつでもプレイできるからね。土地をプレイする時は一考しよう。
ミスその4-相手を読み過ぎる。
誰でも初めは自分のことで手一杯で、相手の行動一つ一つに注意を払いはしないだろう。そしてプレイヤーとして成長するに連れて僕達は相手を読もうとする。相手の行動にどんな理由があるのかを推察しようとする。
その読みは終いには妄想へと変貌するかもしれない。「ふむ、相手は《破滅の刃》をこれに撃ってきた。ということは、アレやアレにアレを持っているに違いない。」そして彼がドレも持っていないことが分かると「はぁぁ?訳がわからないよ!」……ビデオマッチだったら僕はきっとそうぼやくだろうね。実際、自分の考えと相手の考えは異なるものだ。相手の考えが正解で自分の考えは間違いなんて時もよくある!
君が4/2でアタックし、僕は2/2があるにも関わらずそれをスルーしたとしよう。それは大抵、僕は君に対しダメージレースを挑めると思っているというサインになる。君が2/2でアタックし僕が4/2でそれを止めた時、僕はロングゲームを考えている。しかし僕以外の人は他の理由でブロックするかもしれない。ジャイグロを引かれる前にブロックしたかったからとか、狂喜達成を恐れたからとか、4/2よりもライフを取ったからとか。
相手の考えが正解であれ間違いであれ、自分の考えとは異なる可能性を常に心に留めておこう。
より大事なこと。もし僕がLSVと対戦し、彼が2/2で僕の4/2をブロックしなかった時、僕は特別な理由を考えるだろう。彼がダメージレースをしたい可能性に加え、オーラを2/2につけたい、あるいは僕の4/2を《精神の制御》したい可能性を。とにかくそのセオリー外の選択には何らかの理由があると。
じゃあ、もしそれがFNMの一場面だったら?相手がダメージレースをしたい可能性は勿論考慮するが、単に僕がジャイグロを持っていると考え、その2/2を失いたくないと思ったのかもしれない。LSVならジャイグロと2/2をトレードすることは快く受け入れるだろうが、皆がLSVと同じように考えるわけじゃない。
最後に、この章の完璧なまとめとしてCardboard Crack(http://cardboard-crack.com/post/104383096138/i-block)の漫画の一コマを。
相手の行動に理由を考えるのは基本ではあるが、相手が自分とは違うように考えうるということは、どちらの考えが正解かに関わらず忘れないように。
ミスその5-身内との調整。
身内調整は大きなチーム内で行うものほど価値がある。小規模の大会内や様々な知人と行う調整は別段この章で言うような支障にはならないが、近年は大きなチームがプロツアーの常連になりつつあり、プロツアー出場者の半分以上が何らかのチームに所属しているだろうから、身内調整の問題はよりプロを悩ませているだろう。
すなわち身内調整によって、僕らはチーム内で結論づけられた行動や選択を対戦相手もまた行うと確信してしまうかもしれないんだ。
調整相手がずっとアブザンだったら、それに勝ち続けることでアブザンは環境に合ってないデッキだと思うかもしれないし、調整相手のジェスカイが《静翼のグリフ》を4積みしたら、それがジェスカイの主流だと思い込んで自分はデッキから《包囲サイ》や《女王スズメバチ》を抜いてビート方向に練り直すかもしれない。
この間のプロツアーでは初めから《ジェスカイの隆盛》コンボをチーム内で調整したわけだけど、僕達はまさにその問題に苦しめられたよ。隆盛コンボはチーム内の他のデッキに良く勝てて、すると皆はサイドにカウンターや《消去》、挙句は《精神染み》まで積み始めたんだ。こうなると皆は隆盛コンボを使いたくなくなった。プロツアーはサイドに消去や精神染みが積まれるのが当たり前になると思ったから。それと同時に隆盛コンボにはサイド後も勝ち目がない緑単系のデッキも減ってしまった。
結果的には、隆盛コンボの使用者は僕達の想定よりもずっと少なく、同様にアンチ隆盛コンボのサイドボードも多くは取られていなかった。隆盛コンボを恐れてデッキを変えたチームメイトは後悔しただろうし、サイドに消去を大量に取った者もその使用機会には恵まれなかっただろう。(皮肉にも今は優良なサイドボードとなっている。隆盛ではなく鞭のために。)いや、隆盛コンボをプレイすればよかったと言いたい訳ではない(そんなに活躍はしなかったし)、だけど隆盛デッキのサイドボードは他のデッキのサイドボードに比べてずっと腐りやすかったはずだ。隆盛コンボへのヘイトはそう高いものではなく、メインのままでも十分戦えただろうから。
身内で調整する時は身内のデッキに焦点を当てすぎないことだ。皆が自分と同じように考えるわけじゃない。どのデッキや構築がベストか、皆が同じ道を辿るわけではないんだ。大事なことなのでry
もし自分が身内の特定のデッキに固執していると感じたら、一歩下がって、第三者の視点に立って改めて考えてみることだね。
さて、今日言いたいことはここまで。楽しんでもらえると嬉しいよ。ではまた来週!
PV
By Paulo Vitor Damo da Rosa // 17 Dec, 2014
http://www.channelfireball.com/articles/pvs-playhouse-the-top-5-mistakes-good-players-make/
やあ!
マジックは複雑で、ミスの1つや2つは簡単に起こしてしまうものだ。経験が浅いほどミスはよりしやすいが、どんなに慣れても絶対にミスをしない境地には辿り着けない。僕が競技マジックに勤しむようになった頃に読んだGabriel Nassifによると、彼は1ゲームにつき少なくとも1回は大きなミスをし、それを励みにするそうだ。しかも依然として直っていないんだってね。
誰でもマジックを始めたての頃は基礎もままならず多くのミスをする。これはプレイヤーとして熟達していくに連れて直っていくが、熟達したプレイヤーほど過剰に相手を『読んで』しまって、初心者よりも結果的に多くのミスをしてしまうんだ。
ミスその1-あらゆる要素をコントロール出来ると思ってしまう。
競技マジック志向になると誰もが自分の運の無さを嘆く。土地事故、相手の神引き、ダブマリ、などなど……。そんな状況にいざ対峙すると、皆その不運に気を取られ、勝率を少しでも向上できる手段があっても見落としてしまう。
成長していくに連れて、今まで見落としてきたプレイングに気付くだろう。ああそうさ、さっき4枚目の土地を引けなかったばっかりに負けてしまったけど、2ターン目に別のプレイをしていれば1ターン余分に生き残ってそれを引けたかもしれない。相手が長期戦で強いカードを何枚も引いたようなら自分もそんなカードをデッキに入れればいい。僕達はそういった敗北から自分の弱点を知り、修正していくものだ。それが上手いプレイヤーになるための第一歩さ。
じゃあ問題は何かって?その第一歩を踏み出しすぎることだ。僕達はあらゆるもの全てをコントロールしようとするが、そんなことは出来ない。空振りに終わるだけだ。多くの戦術記事はよく、「もし君が負けたら、それにはなにかミスがあるから、それが起こった原因を探してみよう」と言う。確かに励みになる言葉だ。もし敗北が本当に自分自身のミスによるものであれば、それを修正し、そんな記事を書けるような謙虚で現実的なプレイヤーになれるだろう。だけど、それは常に正しくはない。
マジックには偶然性が付き物だ。プレイアブルでないハンドを2回も貰いダブマリすることになり、2枚目の土地を引けずに負けてしまうことは普通にある。ではその敗北のどこに落ち度があるだろうか?
一番大切なこと。たまに不運でもないのに負けることがあるが、そこにミスがあったとは限らないのだ。全て正しいプレイをしても負けることもある。しかしその負けを過剰に正当化しようとすると、それは将来のミスに繋がる恐れがある。マジックで負けるなんて当たり前だ。2人で対戦したら1人は必ず負ける。その2人がどんなに優れてたプレイヤーで引きが完璧であったとしても、それでもやはり1人は負けてしまうんだ。
大切なことなので2回言うけど、「全てをコントロールすることは出来ない」!これを理解し、ただ1つの敗北から自分を責めないことだ。理由もなく負ける、それはよくあることなんだ。
負けてしまってもそれは君の責任ではない。正しいプレイをしても負けることはある。負けとはマジックというゲームの一部であり、そこに特別な理由なんて無い。ツイていたって負けるときは負ける。世界の強豪ですら勝率は70%を下回る。『最強のプレイヤー』なんてものがいたとしても、75%にも届くか怪しいね。
どうか、自分に厳しくしすぎないことだ。何とかして勝率を向上できるプレイングを探し当てることも大事だが、それと同じくらい、自分自身ではどうしようもない部分がマジックにはあることを理解するのも大事だ。
ミスその2-構築戦で後手を選ぶ。
先手を取るのは自然なことだ。初心者も十中八九先手を選ぶだろう。そして経験を積んでいくと後手の重要性に気付いていく。例えばテンポではなくカードアドバンテージで勝てるシールドでね。
やがて彼らは後手を選ぶようになるだろう……少々過剰なまでに。「後手選択は上級者の基本」とでも言うかのように。
僕の考えでは構築戦で後手を選ぶ戦術はもう過去の遺物だ。ソーサリーやインスタントが強かった昔は確かに有効だったが、今はクリーチャーやプレインズウォーカーといったパーマネントのカードパワーが上昇しており、その戦術が通用するようなゲームではなくなっている。
《稲妻》は1ターン目であろうと2ターン目であろうと3点入れる。もし3/3が2ターン目にいたら同じく3点を入れられるが、1ターン目にいたら6点だ。プレインズウォーカーは早く出せばより多くのアドバンテージをもたらす。後手に回って相手の行動に逐一対処を迫られるなんて御免だね。コントロールミラーなら尚更だ。
プロプレイヤーがミスって後手を選んだ場面を僕は2つ覚えている。1つはSam BlackがPTフィラデルフィアの準決勝でJosh Utter-Leytonと対決した時にやらかした。彼は《猛火の群れ》感染を、JoshはCFB製ズーだったが、Samは後手を選んだんだ。(※参考:http://coverage.mtg-jp.com/ptphi11/article/000584/)
そのマッチアップにおいて彼の想定するサイドボーディングは《呪文滑り》等を入れることであった。試合は消耗戦になりやすく、故に彼は後手を取りそれらをより多く引くことを欲した訳だ。……だが、彼は先手を取ることで得られるテンポアドバンテージとドブンの価値を見落としていた。Samが《墨蛾の生息地》をコントロールしているときにJoshが取れる策はただクリーチャーを展開することのみであり、Samには妨害を受けずに楽々と勝利できる可能性があったし、2ターン目に《荒廃の工作員》をプレイしたなら返しでJoshはそいつの除去に全力を注がなければならない。もしJoshが先手なら、彼が先にクリーチャーをプレイ出来るというメリットによってそれらの脅威は無に帰す。例えば《荒廃の工作員》を除去して3点のアタック、或いは《荒廃の工作員》を除去して6点。更に追加のパワー3クリーチャープレイ。カードを多く引けることよりもずっと大きなアドバンテージだ。
もう1つの場面は青黒コントロールを駆るGuillaume Wafo-TapaがCaw-Bladeと対峙した時だ。彼も後手を選び、その理由もやはり消耗戦におけるカードアドバンテージだった。僕はその選択はミスだと思う。何故なら《戦隊の鷹》は彼にとって大きな脅威となるはずであり、《マナ漏出》はそれへの最適な回答になる。しかし後手を選ぶと2ターン目の鷹に対処出来なくなってしまうのだ。
さて恐らく大抵の人は構築戦で先手を選びがちだろう。それは往々にして正しい選択であり、稀に悪手となることはあっても致命的なミスにはならない。そして、どちらが先手かで勝率が大きく変わるマッチアップ―65%対35%が35%対65%になるような―そんなマッチアップで後手を取ったらそれは致命的になる。相手に蹂躙される前にそのミスから持ち直す猶予は……極僅かだ。
一方、後手の強みは些細なものだ。例え後手を取るべき試合で誤って先手を取ってしまったとしてもせいぜい勝率が52%対48%から48%対52%に変わる程度だろう。それに後手を取るべき試合とは長期化するものであり、後手で得たアドバンテージもロングゲームでは薄まっていく。僕だって最後に構築戦で後手を取るべき試合があったのはいつだったか覚えてないよ。だから、迷ったなら先手を取るべきだ。
ミスその3-土地をプレイしない。
ブラフの概念が無い初心者は手札に残った土地を全てプレイする。しかし経験を重ねるに連れて、手札に土地を抱え込むことが大抵ブラフとして機能することに気付く。……そして更に熟達していくと、土地を抱え込みすぎたがために負けてしまう試合をいくつも経験するだろう。
負けてしまう原因は2つ。1つは、思っていた以上にマナを要求される場面があったということだ。シディシウィップを使っているところを想像して欲しい。場の土地は11枚、手札に残ったのは土地2枚のみ。諸君は12枚目の土地なんてプレイする必要はないと考える。……だが、次に《エレボスの鞭》を引いた時、それがミスであったと気付くだろう。鞭をプレイし(計4マナ)、《サテュロスの道探し》を釣り(計8マナ)、墓地に落ちた《イニストラードの魂》の能力を起動(計13マナ)出来れば最高の動きだ。これは12枚目の土地を前のターンにプレイしていなかったら出来ないムーブだ。
他にも、《宝船の巡航》デッキなら土地を全てプレイしておけば、トップした巡航で複数のスペルやはたまた追加の巡航を引き、それらを即プレイに持ち込めるかもしれない。
ここで言いたいことは、土地を抱え込み相手に『何かを持っている』と思わせるよりも、次のターンにカードを満足にプレイできる可能性があるなら、後者を取るほうが勝利への貢献度は高いということだ。
2つ目の原因はブラフに対する過大評価だ。ハンドが土地であることは大体看破されてしまうものだよ。11マナもあるのに2枚も手札に残したまま《包囲サイ》に一方的に殴られている時、相手はそれが《再利用の賢者》2枚だと思うかい?何かゲームプランを変えてくれるとでも?
勿論、「土地は全てプレイしろ」と言ってるわけじゃない。それはマナの使い道(mana sinks)があるときと無い時でケースバイケース。もしそれが無い時なら手札の最後の土地を温存するのは大抵正解だ。それはいつでもプレイできるからね。土地をプレイする時は一考しよう。
ミスその4-相手を読み過ぎる。
誰でも初めは自分のことで手一杯で、相手の行動一つ一つに注意を払いはしないだろう。そしてプレイヤーとして成長するに連れて僕達は相手を読もうとする。相手の行動にどんな理由があるのかを推察しようとする。
その読みは終いには妄想へと変貌するかもしれない。「ふむ、相手は《破滅の刃》をこれに撃ってきた。ということは、アレやアレにアレを持っているに違いない。」そして彼がドレも持っていないことが分かると「はぁぁ?訳がわからないよ!」……ビデオマッチだったら僕はきっとそうぼやくだろうね。実際、自分の考えと相手の考えは異なるものだ。相手の考えが正解で自分の考えは間違いなんて時もよくある!
君が4/2でアタックし、僕は2/2があるにも関わらずそれをスルーしたとしよう。それは大抵、僕は君に対しダメージレースを挑めると思っているというサインになる。君が2/2でアタックし僕が4/2でそれを止めた時、僕はロングゲームを考えている。しかし僕以外の人は他の理由でブロックするかもしれない。ジャイグロを引かれる前にブロックしたかったからとか、狂喜達成を恐れたからとか、4/2よりもライフを取ったからとか。
相手の考えが正解であれ間違いであれ、自分の考えとは異なる可能性を常に心に留めておこう。
より大事なこと。もし僕がLSVと対戦し、彼が2/2で僕の4/2をブロックしなかった時、僕は特別な理由を考えるだろう。彼がダメージレースをしたい可能性に加え、オーラを2/2につけたい、あるいは僕の4/2を《精神の制御》したい可能性を。とにかくそのセオリー外の選択には何らかの理由があると。
じゃあ、もしそれがFNMの一場面だったら?相手がダメージレースをしたい可能性は勿論考慮するが、単に僕がジャイグロを持っていると考え、その2/2を失いたくないと思ったのかもしれない。LSVならジャイグロと2/2をトレードすることは快く受け入れるだろうが、皆がLSVと同じように考えるわけじゃない。
最後に、この章の完璧なまとめとしてCardboard Crack(http://cardboard-crack.com/post/104383096138/i-block)の漫画の一コマを。
※簡易訳
「アタックだ」
「ブロックするよ」
「ブロックすんの!?さっきまで僕は攻撃後に土地を置いていたのに今のターンは攻撃前に置いた。それはつまり《胆汁病》をプレイ出来るようにするためさ。実際は胆汁病を持ってなかったけど、それを考えると今のはブロックすべきじゃないよ!おかげでこっちは一方的にやられちゃったじゃないか!どうしてそんなブロックしようと思ったんだ!?」
「え、インスタントって戦闘中にもプレイ出来るの?」
「くぁwせdrftgyふじこlp;@:」
相手の行動に理由を考えるのは基本ではあるが、相手が自分とは違うように考えうるということは、どちらの考えが正解かに関わらず忘れないように。
ミスその5-身内との調整。
身内調整は大きなチーム内で行うものほど価値がある。小規模の大会内や様々な知人と行う調整は別段この章で言うような支障にはならないが、近年は大きなチームがプロツアーの常連になりつつあり、プロツアー出場者の半分以上が何らかのチームに所属しているだろうから、身内調整の問題はよりプロを悩ませているだろう。
すなわち身内調整によって、僕らはチーム内で結論づけられた行動や選択を対戦相手もまた行うと確信してしまうかもしれないんだ。
調整相手がずっとアブザンだったら、それに勝ち続けることでアブザンは環境に合ってないデッキだと思うかもしれないし、調整相手のジェスカイが《静翼のグリフ》を4積みしたら、それがジェスカイの主流だと思い込んで自分はデッキから《包囲サイ》や《女王スズメバチ》を抜いてビート方向に練り直すかもしれない。
この間のプロツアーでは初めから《ジェスカイの隆盛》コンボをチーム内で調整したわけだけど、僕達はまさにその問題に苦しめられたよ。隆盛コンボはチーム内の他のデッキに良く勝てて、すると皆はサイドにカウンターや《消去》、挙句は《精神染み》まで積み始めたんだ。こうなると皆は隆盛コンボを使いたくなくなった。プロツアーはサイドに消去や精神染みが積まれるのが当たり前になると思ったから。それと同時に隆盛コンボにはサイド後も勝ち目がない緑単系のデッキも減ってしまった。
結果的には、隆盛コンボの使用者は僕達の想定よりもずっと少なく、同様にアンチ隆盛コンボのサイドボードも多くは取られていなかった。隆盛コンボを恐れてデッキを変えたチームメイトは後悔しただろうし、サイドに消去を大量に取った者もその使用機会には恵まれなかっただろう。(皮肉にも今は優良なサイドボードとなっている。隆盛ではなく鞭のために。)いや、隆盛コンボをプレイすればよかったと言いたい訳ではない(そんなに活躍はしなかったし)、だけど隆盛デッキのサイドボードは他のデッキのサイドボードに比べてずっと腐りやすかったはずだ。隆盛コンボへのヘイトはそう高いものではなく、メインのままでも十分戦えただろうから。
身内で調整する時は身内のデッキに焦点を当てすぎないことだ。皆が自分と同じように考えるわけじゃない。どのデッキや構築がベストか、皆が同じ道を辿るわけではないんだ。大事なことなのでry
もし自分が身内の特定のデッキに固執していると感じたら、一歩下がって、第三者の視点に立って改めて考えてみることだね。
さて、今日言いたいことはここまで。楽しんでもらえると嬉しいよ。ではまた来週!
PV
コメント
お疲れ様です。
翻訳元の凄さもさることながら、引用されている四コマシリーズ本当に面白いですよね。Tumblrで散見するのですが好きです。
身内の誰かさんに耳にたこができるまで聞かせたい内容ですねぇ…
ありがとうございます!今は時間が有り余っているだけで作業時間はとても長かったり。
Cardboard Crackは今回初めて知りましたが、MtGに関する風刺・皮肉がどれも中々笑えましたw
>ナナカセニキ
>TAP氏
一体誰のことなんだ……(困惑
>ひるぎちゃん
元記事のコメント欄で「俺はここに書いてあるミス1つもしないぜ」「じゃあお前は上級者じゃないな」というやり取りがあってワロタ
リンクさせていただきました。
ありがとうございますー。ためになる記事は是非多くの方に読んでいただきたいですね。
こちらもリンク致しました!
4コマは《涙の河》でも場にあるんですかね。
常々モヤモヤと考えていたことが、ハッキリ文章で表現されていて、感動しました。
翻訳お疲れさまです。
乙ありです!
それまで黒マナが出る土地が1枚だけだったんでしょうかね。ちょっと訳に工夫できればよかったです。
>noharaさん
プロが書いた素晴らしい文章は翻訳も捗りますね。ありがとうございます。