TEMPO & CARD ADVANTAGE: A DELICATE BALANCE
Posted in Level One on November 17, 2014

By Reid Duke
http://magic.wizards.com/en/articles/archive/level-one/tempo-card-advantage-delicate-balance-2014-11-17

http://nanonium.diarynote.jp/201603241701082532/
http://nanonium.diarynote.jp/201512291113533969/
目次 http://nanonium.diarynote.jp/201512070654077632/


テンポとカードアドバンテージ。Level Oneで扱ったこれらの概念はゲームで最も直接的に影響を及ぼすものだ。マジックのセオリーを議論する中でも最も話題にされ、特に面白い部分でもある。しかしこの『暗号』……これら二つのリソースを扱うガイドラインは未だに誰にも明らかにされていない。プレイヤーにも、ライターにも、研究者にも。

テンポとカードアドバンテージは互いに拮抗しあうものだ。テンポを犠牲にしてカードアドバンテージを取ることもあれば、カードアドバンテージ(またはカードの質)を犠牲にしてテンポを取りにいくこともある。これらの交換はデッキ構築やプレイングに起因する。

この二つのリソース差を書き表し、あらゆる状況全てに適応できる方程式は無い。「ここのテンポはここのアドバンテージと等価交換云々」なんて言えたものではない!どちらがより大事であるか、ゲームの敗北を招きやすいのはどちらの不足かを明確にする事もできない。あなたがすべきことは、1つ1つのマッチアップでテンポとカードアドバンテージの価値がどのように変わっており、どちらに焦点を置くべきかを見極めることである。

さて、マジックの試合段階は2つに区分できる。『ゲーム前半』『ゲーム後半』だ。(語彙不足だけど)

ゲーム前半では、プレイヤーは手札は十分だがマナに限りがあり、盤面を取り合いながら優勢を競うことになる。テンポは確かなアドバンテージとなり、それがもたらすリターンは大きい。

ゲーム後半では状況は整理される。呪文や土地はプレイされ、どちらか一方の優位が築かれているか、対等のままでスローゲームになっているだろう。使えるマナはいくらでもあるがその消費手段は少ない。ゲーム後半にテンポアドバンテージを得ることは難しくなってくるんだ。

この二つの段階の期間と重要性は非常に流動的である。これを見極めるんだ!例えば、遅いことで有名な青白コントロール同型戦だと、ゲーム前半とはどちらかが一早くプレインズウォーカーをプレイすることに成功して、わずかながらのアドバンテージを得ることである。一方で超高速ウィニーミラーでは『ゲーム後半』になる前に勝負そのものがつく!このゲーム段階を見極め、どうプレイすればいいか把握することでカードの上手い使い方が出来ることだろう。



前半戦

前半は前に出るチャンスだ。素早く動いて相手を撹乱し、得たテンポアドバンテージを押し通す事ができれば勝利は簡単だ。大抵はクリーチャーやプレインズウォーカーがこの役目を担うだろう。

デッキが十分に早ければ前半だけでゲームを取りに行くことは容易だ。最も美しい終わり方は相手が持てるカードを全てプレイし切る前に削り切ることだが、前半に得たテンポアドバンテージは別の形となって後半戦でのアドバンテージに変わる。典型的な例はライフ総量だろう。

赤単は速いものだ。相手の初動を待たずして軽いクリーチャーを先に何体も展開する。このテンポアドバンテージは速やかに相手へのダメージに切り替わる。相手(あなたより遅いがカードパワーは高いデッキ)が《対立の終結》や《太陽の勇者、エルズペス》を展開出来るころになったら、ゲームは後半戦だ。相手のあらゆるカードはアドバンテージ源ではあるが、赤単が先に稼いだテンポアドバンテージは14-16点ものダメージに還元済みだろう。そうなったらあとはバーン呪文で相手を焼き切るだけである(いわゆる『リーチ』だ)。

ゲーム前半のテンポアドバンテージは適切な状況下ではカードアドバンテージに還元されることもある。例えば《歓楽者、ゼナゴス》のようなプレインズウォーカー。唱えるのが早ければ早いほど、それは毎ターン2/2サテュロスという形の確固たるカードアドバンテージをもたらしてくれる。後半になるころにはそのプレインズウォーカーは倒されてしまっているかもしれないが、彼はもう大量のダメージを与える形で仕事をこなしており、あなたは残りのライフを他のクリーチャーで削るだけで良い。クリーチャーにも似たような仕事をするものがある。トークンを出せる《ゴブリンの熟練扇動者》や手札を整える《ジェスカイの古老》などだ。

相手より早いデッキのゴールは、前半でテンポを得た後にそのアドバンテージを押し通すことだ。遅いデッキのゴールはペースを保ちつつ、ダメージ(ライフでも、ゲーム展開に関わることなら何でも)を抑え、早めにゲームを『後半戦』に移すことである。

同じ速度同士なら、先に動いた側が後々にアドバンテージを得ることになるだろう。後手で相手のプレイをただ真似るとまず負ける……劣勢で始まり劣勢に終わる。『サーブブレイク(※)』のためには、後手側ではリソースを交換し、ゲーム速度を落とし、相手と(出来るだけ)対等な状況で後半戦に移らなければならない。

※テニスにおいてレシーブをする側がゲームに勝つこと



後半戦

前半戦はマナの制限が焦点だった。手札はあっても場の土地は少なかったわけだが、後半戦ではその縛りが薄れると共に、より広い選択肢が取れるようになる。制限されるものはマナ(とテンポ)に代わってカードアドバンテージやライフ残量などへシフトしていく。

《時を越えた探索》や《苦々しい天啓》はとても質の良いアドバンテージをもたらしてくれる。前半戦ではボードを取るためにクリーチャーや除去のプレイに集中し、後半になってゲーム速度が落ちてからそういったアドバンテージ源となるカードを使うことで、それから得たリソースを思うがままに使うことが出来る。

大抵のデッキは後半になると手札を消費し、トップに頼らざるを得なくなる。自分の速度を落としてでも、持ちうるリソースを効率良く使いきらなければならない。前半では占術で土地や軽いカードをトップに置いてきたとしても、後半ではより持久力のあるカードを求めて同様に速度を落としてでも探しに行くだろう。

それではある2種類の呪文についてその特徴と、それらの使い方は前半戦と後半戦でどう変わってくるのかを見てみよう。



パーミッション呪文

《解消》のようなパーミッション呪文はテンポと大きな関係がある。あなたが盤面で対等かそれ以上に優勢である場合、パーミッション呪文は非常に有効な働きをする。一方、盤面を取られている時は状況を好転させる働きは中々してはくれない。

それにパーミッション呪文は何時でも使えるわけではない。《解消》を撃ちたいときはマナを構えなければならないし、相手が動いてきた時のみそのマナを《解消》へ注ぎ込む事ができる。

前半戦では一度《解消》を構えたら何が来てもカウンターするべきだ。それが想定より低い脅威であったとしても。そうしなければ、構えたマナは無駄になり、明確なテンポロスになってしまう。

逆の立場で、もし相手がカウンターを構えているようなマナの立たせ方をしてきた時は弱めのカードから使っていくのが良いだろう。相手にテンポロスとカウンター消費の2択を迫ることで、続けて強力なカードを通しに行くことが出来る。より良い手段としては、手札からカードを使う代わりに《ラクシャーサの死与え》のような起動型能力や長久・怪物化といった能力にマナを使うことで、相手にカウンター呪文自体を撃たせないというプレイングがある。

後半戦でのパーミッション呪文は少々違ったものになる。最もカウンターしたいカードがプレイされるまで他のカードをわざと通す選択肢が出てくるんだ。もちろんそれが最良であればの話だが。《火口の爪》X=10を回避するために《荒野の後継者》等を1度は通すといった具合だ。

ジェスカイ・ウィンズ - Ben Stark
プロツアー『タルキール覇王譚』

4 《溢れかえる岸辺》
4 《神秘の僧院》
4 《シヴの浅瀬》
2 《戦場の鍛冶場》
2 《島》
2 《平地》
2 《啓蒙の神殿》
2 《天啓の神殿》
1 《マナの合流点》
1 《山》

4 《道の探求者》
4 《ゴブリンの熟練扇動者》
4 《カマキリの乗り手》

4 《稲妻の一撃》
4 《マグマの噴流》
3 《無効化》
4 《ジェスカイの魔除け》
4 《かき立てる炎》
2 《龍語りのサルカン》
3 《時を越えた探索》

サイドボード
2 《無効》
2 《消去》
4 《停止の場》
2 《軽蔑的な一撃》
2 《否認》
3 《オレスコスの王、ブリマーズ》

さて、Ben Starkのこのデッキは2つの異なる用途でパーミッション呪文を使うデッキの例だ。メインに《無効化》と、サイドに《軽蔑的な一撃》が積まれている。どちらも2マナのカウンターであるが、その役割は大きく異なっている。

《無効化》はジェスカイの弱点である2ターン目の動きを埋めるカードだ。Stark氏のプランは2枚目の土地を置き相手のあらゆるカードを《無効化》するというものなんだね。序盤に盤面を取られないためのテンポプレイであると言えるだろう。

サイドに取られた《軽蔑的な一撃》はその逆だ。ジェスカイは往々にして《包囲サイ》や《太陽の勇者、エルズペス》のようなダメージソースに対処しなければならないが、それらを消す《軽蔑的な一撃》は序盤を耐え忍んだ後の後半戦になってからようやく機能するカードだ。



バウンス呪文

バウンス呪文は強力なテンポカードである。前半戦のマナが制限されている状況において、クリーチャーをバウンスすることは相手のターンをスキップさせるようなものだ!

KTKリミテッドでよくある展開はこんなものだ。あなたは2マナ、3マナとクリーチャーをプレイし相手の初動は3マナクリーチャー。あなたはそれを《引き剥がし》でバウンスし、空の相手にダメージを叩き込む。相手は手札は一杯だが土地は3枚のみであり1アクションしか取れない。あなたの後続がしっかり来てくれれば、ゲームを取るのは容易だろう。

盤面を取ることで序盤に得たテンポアドバンテージを押し通す方法は、(他にやることがなければ)バウンスを撃つのが良い。つまり、まずクリーチャーをプレイし、他にプレイするクリーチャーが無くなった(あるいは2アクションとれる)ところで《引き剥がし》を撃つんだ。相手の初動クリーチャーをバウンスすることはゲームの終盤まで影響力を持つ。相手はカードをプレイする手順が1順ズレるからね。

してはいけないのは、相手の後続に対し《引き剥がし》を撃つことだ。相手は他にプレイするカードがなければバウンスされたクリーチャーを出し直すだけであり、あなたはほんの一瞬のテンポアドバンテージを得るだけだ。もちろんそのバウンスによる総攻撃で相手に致命打を与えられるならOKだが、通常は後半にバウンスを撃つことは悪手になりがちである。

殆どのバウンスはディスアドバンテージになるものだ。あなたは手札を消費するが相手のリソースを取り除いているわけではない。後半戦ではよりカードの損失に直結するため、《引き剥がし》をディスアドバンテージすることなく使う方法を探さなければならない。

分かりやすい例だと、オーラのついたクリーチャーをバウンスすることだろう。クリーチャーは戻ってもオーラは戻ってこないからだ。トークンをバウンスすることも同様にロスが無い。

そんな状況でなければ、耐えることが肝心だ!《引き剥がし》を温存することで除去から自分のクリーチャーを守ることも出来る。あなたの《ジェスカイの風物見》に相手が《大蛇の儀式》を撃ってきたのに対応して《引き剥がし》を撃つことで、少々のテンポロスと引き換えに相手の除去とバウンスを交換出来るわけだ。後半戦ではテンポよりもカードディスアドバンテージを如何にして避けるかがより重要となってくる。

《引き剥がし》は戦闘中でも有意な交換をしてくれる。相手の《熊の覚醒》に対応して《引き剥がし》を撃てれば、1:1交換に加えてライフを守ることにもなる!あなたの《氷河の忍び寄り》を相手が2体ブロックしてきたら、片方をバウンスすることで忍び寄りを守るどころかそのままブロッカーを排除できる!

まとめると、後半戦は『耐え』が焦点になる。前半戦は如何に速く展開して相手を追い詰めるかであったが、後半戦になると速度が落ち、耐えながらカードのベストな使い方を模索していくんだ。

マジックの試合は時に後半戦になる前から既に長期戦になることが運命付けられる。そのような試合ではカードアドバンテージを考えることは殆ど問題にはならないかもしれない。だがそうした試合の変化を見極めなければリソースを最大限に使うことは出来ないだろう。相手が辛抱強く、カードアドバンテージを入念に考慮してくる者だった時、あなたはよりディスアドバンテージをしやすくなってしまう。

マジックとは『順応』である。カードのベストな使い方は状況によって変わる。試合毎に何が重要になっているかを定め、それに沿ったプレイをしよう。

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